宅地建物取引業免許の要件
宅地建物取引業免許を取得するためには、以下の要件全てを満たす必要があります。
事務所の設置
「事務所」とは、商業登記簿等に登載されたもので、継続的に宅地建物取引業者の営業の拠点となる施設としての実体を有するものが該当します。よって、宅地建物取引業を営まない支店は該当しません。なお、登記していない個人は、当該事業者の営業の本拠が本店に該当することになります。事務所の数やその所在地により、免許の種類が国土交通大臣免許又は都道府県知事免許どちらの免許を取得すべきか決まるため、事務所の設置は重要な要件となっています。
事務所は、「継続的に業務を行うことができる施設」である必要があります。テント張りのように容易に移動できるような施設やホテルなどは免許を受けることができません。さらに、「他業者や個人の生活部分から独立」している必要があるので、他の事務所と共同利用している場合や生活部分と混在している場合には免許を受けることが難しいですが、それぞれが固定式のパーテーションなどで仕切られており他の事務所を通らずに申請事務所に直接出入りすることができるなど独立性が保たれている場合には、認められる可能性があります。
本店では宅建業の営業は行わず支店のみで宅建業の営業を行う法人の場合、本店も宅建業の事務所とみなされ、本店も営業保証金の供託や専任の宅地建物取引主任者が必要となるため、注意が必要です。
専任の宅地建物取引士
宅地建物取引業の免許を受けようとする本店及び支店の各事務所に、宅建業に従事する5名につき1名以上の専任の宅地建物取引士を設置することが義務付けられています。
「専任」とは、原則として宅地建物取引業を営む事務所に常勤し、専ら宅地建物取引業に従事する状態をいい、他の業者との兼務や兼業は基本的に禁止されています。ただし、当該事務所が宅地建物取引業以外の業種を兼業している場合等で当該事務所において一時的に宅地建物取引業の業務が行われていない間に他の業種に係る業務に従事する場合には専任と認められることもあります。
代表者及び政令で定められた使用人
法人または個人の代表者が免許を申請する場合には、原則として事務所に常駐し業務を行う必要がありますが、何らかの事由により常駐が不可能な場合は、代表権行使を委任した政令で定められた使用人を指定し常勤させることが必要です。
ここでの「政令で定められた使用人」とは、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人とされているため、単なる社員や従業員ではなく、支店における支店長や支配人に相当するような人のことをいいます。
欠格要件に該当していないこと
宅建業の免許を受けようとする個人事業主や法人またはその役員や個人事業主の法定代理人、政令で定められた使用人が下記の欠格事由に該当する場合には、宅建業の免許を取得することはできません。
- 免許申請書やその添付書類中に重要な事項についての虚偽の記載があり、重要な事実の記載が欠けている場合
- 申請前5年以内に次のいずれかに該当した者
- 免許不正取得、業務停止処分事由に該当し情状が特に重い場合または業務停止処分違反に該当するとして免許を取り消された者(その者が法人である場合は、その法人の役員であった者を含む。)
- 前記のいずれかの事由に該当するとして、免許取消処分の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく解散または廃業の届出を行った者(その者が法人である場合は、その法人の役員であった者を含む。)
- 前記の聴聞の公示をされた後、相当の理由なく合併により消滅した法人の役員であった者
- 禁錮以上の刑に処せられた者
- 業法、暴対法に違反し、または刑法(傷害、脅迫等)、暴力行為等処罰に関する法律の罪を犯し罰金刑に処せられた者
- 宅建業に関し不正または著しく不当な行為をした者、宅建業法もしくは暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律の規定に違反したことにより、罰金刑以上の刑に処せられたか、それ以外の法律により禁固刑以上の刑に処せられたことがある場合は、その刑の執行が終わった、又は刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない場合
- 成年被後見人、被保佐人、破産宣告を受けている者
- 宅建業に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかな者
- 申請者の法定代理人、役員または政令使用人が2、3または4に該当する場合
- 事務所に専任の宅建士が設置されていない者
※役員であった者とは免許取消処分の聴聞の公示の日前60日以内に役員であった者をいい、役員とは業務を執行する社員・取締役またはこれらに準ずる者(相談役、顧問、その他いかなる名称を有するかを問わず、法人に対しこれらの者と同等以上の支配力を有する者を含む。)をいいます。
営業保証金の供託または保証協会への加入
宅建業の免許を取得し営業を開始するためには、下記の①または②の手続きを行う必要があります。
①営業保証金を供託する場合の手続き
免許の通知を受け取った後、主たる事務所の所在地を管轄する供託所に、主たる事務所1,000万円、支店ごとに500万円の営業保証金を供託します。
営業保証金は金銭で供託することがほとんどですが、「営業保証金は、国債証券、地方債証券その他の一定の有価証券をもって、これに充てることができる。」とされているので、国債証券・地方債証券・有価証券で供託することも可能です。ただし、有価証券の種類により信用度が異なってくるため、有価証券の評価額に違いが出てきます。なお、ここでの有価証券には、株券・手形・小切手は含まれていません。
営業保証金の供託後、供託した旨を免許権者に届出が必要です。「国土交通大臣又は都道府県知事は、免許をした日から3月以内に宅地建物取引業者が営業保証金を供託した旨の届出をしないときは、その届出をすべき旨の催告をしなければならない。」と規定されており、営業保証金の供託した旨の届出を行わなかった場合は、催告されるので気を付けなければなりません。
また、「国土交通大臣又は都道府県知事は、前項の催告が到達した日から1月以内に宅地建物取引業者が営業保証金を供託した旨の届出をしないときは、その免許を取り消すことができる。」とあり、免許が取り消されてしまう可能性もあるので、きちんとした手続きを行うことが大切です。
②宅地建物取引業保証協会に加入する場合の手続き
宅地建物取引業保証協会とは、苦情解決業務、研修業務、弁済業務、手付金等保管業務、一般保証業務などを行っている国土交通大臣の指定を受けて設立された法人のことです。
この宅地建物取引業保証協会に加入し、弁済業務保証金分担金を納付することで上記①の営業保証金の供託をせずに免許証を取得することができます。
全国宅地建物取引業保証協会(全宅、ハトのマーク)と不動産保証協会(全日、ウサギのマーク)の2種類の宅地建物取引業保証協会があり、どちらか1つに加入することになります。
弁済業務保証金分担金の金額は、主たる事業所60万円、従たる事務所ごとに30万円であるため、営業保証金に比べ金銭的な負担が軽減されており、開業時に営業保証金の供託をしなくても良いということが宅地建物取引業保証協会に加入するメリットです。また、業界団体に加入することで会の活動に参加し同業者と親睦を図れること、情報の提供や研修制度など協会が提供するサービスを得られることもメリットとして挙げられ、開業する方の多くが②を利用しています。
宅地建物取引業保証協会に加入をする場合には、宅建業免許の申請手続きとは別に宅地建物取引業保証協会への加入手続きが必要になります。具体的には、県庁で宅地建物取引業免許の申請手続きを行った後、開業する所在地の市区町村を管轄する協会の支部に連絡し、面談等の入会申込手続について確認をします。許可通知のはがきが到着後に、入会申込書等必要書類・免許通知・入会金等を用意し、入会手続きを行います。弁済業務保証金分担金の供託完了後、免許証を受け取り開業することが可能になります。
協会に加入する際には、入会申込書等の必要書類の準備や面談等の手続きが必要となるため、開業を決めた早い段階から加入する協会に事前相談し、入会手続きについて確認することが大切です。
当事務所は、お客さまのご希望に合わせて全国宅地建物取引業保証協会または不動産保証協会どちらでも加入手続きのサポートをしておりますので、お気軽にご相談ください。